top of page
「能登の風土から生まれ育つ家具」

家具を作る上で大切なものは、信頼できる道具、理想とする形に変化する素材、そして制作する意味を、揺るぎない意志として心の中にとどめてくれる環境。信頼できる道具は、使い込み手に馴染むことで自分の一部となる。素材に使う木は、その特性や硬さ、仕上がりの風合いなどを熟知し、適材適所に使うことで理想とする家具に仕上がる。最後の環境は、私にとって一番重要視する事かもしれない。どんなに素晴らしい道具、最高の素材があっても、それらを使い生み出す家具は、自分のアイデンティティが留まる環境の中で製作したい。

 

石川県珠洲市は能登半島の先端に位置する、いまでも里山里海といわれる「自然と共存するくらし」が残る土地。はじめてこの地を訪れた時、山と海の心地よい距離感と、少しシャイで穏やかな能登の人々のやさしさに触れ、どこか懐かしい日本の原風景を感じた。能登の山で切られた木材が、海の近くにある製材所で加工されている。なんと豊かな環境なのかと感動した。海と山が近い奥能登では、山の自然が荒れれば、海の環境も変化することを、この土地の人は知っている。だから、今でも自然と資源を、生活と直結する大切なもの、という認識をもった人々の暮らしがここにはある。私はすぐにこの土地が自分の理想とする環境だと悟り、Suzu Woodworking Studioとして、家具製作の拠点をこの地に作った。

 

都市から遠く離れた土地で家具を作ることは、作り手と使い手の距離が遠く、通常であれば不利な環境である。ただ、私にとっては自分の感性が磨け、自然と対話しながら日々を過ごせる奥能登は、家具を作る上での理想の土地。大量生産、大量消費とは違い、資源と環境に配慮したこの土地がならではの「くらしかた」こそ、私の求める家具のすべてが詰まっている。一つ一つを丁寧に作り、使い手のニーズにあったオーダーメイドの家具。能登の風土から生まれる家具であり、使う人の生活の中で表情を変え、育っていくような家具。私はそんな家具をこの地で作り続けていきたい。

Suzu Woodworking Studio 代表
Hiroshi Tsujiguchi

Suzu Woodworking Studio

Furniture

DSC_2654.jpg

OKUNOTO 
​TRIENNLARE 2020+

Sawmill Overlooking the Ocean

2021年に開催された奥能登国際芸術祭2020+の作品 Noto Aemono Project「海をのぞむ製材所」は家具を使ったアート作品です。真喜志 奈美さんによって設計された家具の製作をSuzu Woodworking Studio 辻口が担当させていただきました。能登の木材を使い、製材所を舞台に、沢山の家具を配置したこの作品は、多くの来場者に観覧していただき、能登での家具製作のポテンシャルを最大限に引き出してくれました。そして、この作品をきっかけとして、Noto Aemono Projectは能登産の木材を使い、能登で製作される家具を日本中に広げていく活動へと発展しています。

bottom of page